入り口をしっかり認識

エントランスは物件の顔、マンション全体の雰囲気を決定付けます。そして館銘板はエントランスの一部、「ここが入口、マンションの雰囲気を一番表す場所です」と伝えるのがその役割です。
 
所有物件や街中のマンションの館銘板にちょっと注目してみて下さい。薄汚れていたり文字が剥がれ落ちていたり、木の枝や隣のテナントの看板に隠れていたりしていませんか?
 
館銘板の見栄えが悪いと存在感が薄くなり、エントランスの場所を示す役割を果たさなくなります。
汚れたり壊れたりしているものは周辺の風景を損なうのでなんとなく視界に入れたくなくなりますし、「使われていない施設だから修繕せず放置している」と考えられてしまうからです。
 
例え古くても名前がしっかり読み取れる館銘板には、エントランスの場所をしっかり示す存在感があり、その古ささえ建物自体に安定感、重厚感を与える材料になります。
 
館銘板はマンションの外観やエントランス部分と同じく、物件の印象を大きく左右するポイントとなっているのです。

名刺や看板と一緒、おしゃれがマスト

カフェやバー、ブティックなど、サインに惹かれてつい立ち寄ってしまったことはありませんか?
優れたデザインのサインにはお店のコンセプトが魅力的に表現されているため、「美味しそう」「センスが良さそう」と、そのビジュアルだけで判断させてしまう影響力があります。
 
そしてまさに館銘板はマンションのコンセプトを表すもの。
ここにはどんな人が住みどういう暮らしが叶えられる場所なのか?デザインにしっかり反映させれば、お店のサインと同じような効果を発揮してくれるでしょう。
子育て世代、リタイア後のシニア世代、DINKSなど、多様なニーズに応えるようになった分譲マンションでも、ここ最近は館銘板のデザイン性が高くなってきています。
 
 
名称を知らせコンセプトを表す館銘板は、マンションにとっての名刺と言っても良いでしょう。
従って、使用するフォント(文字の種類)選びも、与える印象を大きく左右します。
 
Web上で、街中の看板で、TVや雑誌で、人々は日々何十、何百種類のフォントに親しんでいます。
となればフォントにも流行り廃りや好みが出てくるもの。人目を惹き付けなくなったフォントは、あらゆる媒体からどんどん排除されていきます。
マンションの館銘板も役割を果たすには、時代に合わせてセンスアップしていく必要があるのです。

光る、浮く、動く、消える……

館銘板の素材やデザインの例をご紹介します。
 
・真ちゅう製、ステンレス製
オフィスビルのサインによく使われている素材です。特に中高年の男性に好まれる、高級感と重厚感があります。
マンションの館銘板でもほど良い高級感が出ますが、硬くなりすぎないようフォントを工夫したいところです。
 
・時間帯によって表情を変える
文字パーツに細い脚を生やしたサインは、壁から浮き上がらせて取り付けます。立体感を利用した表情の変化が特徴です。
 
文字と壁の間のスペースに照明を取り付けて夜間に点灯しましょう。文字が逆光でより立体的に浮かび上がり、上品で幻想的な雰囲気になります。
 
斜め前から当てた光で文字のシルエットを壁に映すタイプもあります。太陽の動きとともにシルエットが移動する、動きのあるデザインです。夜間は照明を効果的に当てましょう。あまり大きなサインにせず周囲のスペースを広めにとった方が、このデザインの特徴を楽しめそうです。
 
・夜にこそ本領発揮
街中のお店のサインでも多いのが、文字そのものを発光させるタイプ。光の色によって印象が変わります。夜間も文句なしに目立つのが長所です。
 
ちょっと変わっていて面白いのが、いわゆる「影絵」方式。壁や床にサインのシルエットを大きく浮かび上がらせて、「シルエットそのものが館銘板」となります。仕事や付き合いで帰宅が遅くなりがちな層に、お洒落にアピールできそうなサインです。

機能表示や集客装置に

マンションのロゴマークを制作してサインにするのもおすすめです。ロゴマークは読みやすさよりデザイン性とインパクトが優先されるもの。エントランスや外壁に配置すると目を惹き、強いアピール力を発揮します。
 
例えばスターバックスのサインのような丸いデザインは、インパクトがありながら空間を和ませる効果も併せ持ちます。
道の向こうからも判別できるインパクトと、ほっと落ち着ける店内を象徴する、丸い人魚のロゴマーク。物件を印象づけた上で暮らしやすさを想像させたいマンションには、理想的なデザインと言えるでしょう。
 
 
アピールしたい設備・施設をピクトグラムにして、館銘板と合わせて配置しましょう。インターネットやケーブルテレビ、エレベーター、いつでも利用可能なダストシュートなど、配色もマンション全体のコンセプトに沿ってデザインします。
 
視線を集めるインパクトがありながら、誘導性が露骨にならずスタイリッシュな印象を与えられるのがピクトグラムの長所。取り入れてみれば物件を目にする人に、きっと好印象を与えてくれます。
 
 
館銘板とロゴマーク、そしてピクトグラムは、物件を探す人、住む人の心を掴むのにとても有効なツールです。
充分効果を発揮するよう、素材にもデザインにもしっかりこだわっていきましょう。
 
著:猫野千秋