賃貸物件オーナーが悩む「大規模改修工事」

不動産経営は家賃収入のプラスがある一方、管理の手間暇、費用がかかるものです。
中古物件はもちろんのこと新築物件の場合でも、年月とともに建物が汚れたり劣化したり、設備が旧式になっていったりするのは免れません。放っておけば建物の安全性が低下して、入居者の日常生活に支障が出る可能性もあります。
建物の維持管理のために定期的な大規模改修工事を実施するのは、賃貸オーナーの義務といって良いでしょう。
 
しかし、不動産経営に乗り出す当初から建物の維持管理を具体的に考える人は、恐らく少数なのではないでしょうか。
建築のプロではないオーナーは、一体どうやって工事箇所を決めれば良いのか、費用はどれくらいかかるのか、そもそも「定期的な工事」はいつやるべきなのか等々、なにもかも疑問だらけで判断の仕方もわからないはず。長く経営に携わっているオーナーでも、準備の仕方やかかる費用に確信が持てないまま経営を続けてきたというケース、実は多いかもしれません。
 
賃貸オーナーの悩みの種となっている大規模改修工事。疑問や不安をクリアできるよう、準備のポイントをご説明していきます。

大規模改修工事のポイント

・工事の時期
理想的な工事周期は12〜13年ごと。分譲マンションの多くも同じような周期で工事が行われています。
できれば新築から10年が経過したら、あるいは前回の工事から10年が経過したタイミングで、大規模改修工事の準備を始めましょう。
 
・まず何をすべきか?
最初にすべき準備は、必要な工事の把握です。どんな工事をするのかがわからなければ、かかる費用も判断
できず工事計画もたてられません。
修繕の必要があるのはどこか、「建物診断」を受けて明らかにしましょう。管理会社・工務店・建築設計事務所・施工業者といった建築のプロに依頼して作業してもらいます。
 
・優先順位を考える
建物の安全に関わる工事、塗装や設備強化で建物の寿命を延ばす工事、共用部の美観を保ち住環境を整える工事、大規模改修工事の内容は、大体この3つに分けられます。
この中で必ず対処しなければいけないのは、当然ながら建物の安全に関わる工事です。賃貸オーナーの負う最重要義務といえますので、予算をしっかり押さえておきましょう。 
「足場を組む必要がある工事かどうか」という点も、優先順位を決めるポイントになります。足場を組む工事を複数回に分けて行うと、その都度足場の費用がかかってしまうため、一度の機会に全ての工事を実施してしまうのがベストです。
 
・早い動き出しで費用を抑えて準備を楽にする
劣化が進行し建物の汚れが目立つようになると、入居率が低下していくのが普通です。すると入居者から徴収できる管理費が減少し、大規模改修工事にかけられる費用も少なくなります。
また、建物の劣化が進めば進むほど必要な工事が増えて工事期間も長くなり、工事費用が膨れ上がります。
潤沢な工事費用を確保し余分な費用負担を抑えるには、早めに工事準備に取り掛かることが大切です。
 

資産価値アップと入居率アップの秘策

大規模改修工事前のマンション全景

デザイン会社によるデザインを施したバーチャル画像全容

大規模改修工事後のマンション全景

入居者のために建物の安全を管理し、住環境を整えるのが賃貸オーナーの義務。とはいえ、費用をかけて十数年に一度の工事を行うのなら、プラスαの効果を望みたい……というのがオーナーの本音ではないでしょうか?
 
そこで提案したいのが、外観デザインのリノベーションです。
不動産経営は投資先としての興味から始める人がほとんどで、建築デザイン面からのアプローチを真剣に考えるオーナーはあまり多くありません。しかし大規模改修工事はその意識を変え、外観リノベーションのメリットを享受するのにもってこいのチャンスなのです。
 
どんな人たちをターゲットにして物件をアプローチしたいのか、改めて考えて外観リノベーションのイメージを具体的に固めていきましょう。
固まったイメージに基づいて、デザイナーに所有物件のリノベーション後のデザインしてもらいます。
工事後のバーチャル画像を目にすれば、大変な工事の準備もたまらなくワクワクするものに変わるはずです。
 

業者選びは相見積もりで!

大規模改修工事は建物の寿命を伸ばし、資産価値を高め、さらに入居率や家賃のアップに繋がるもの。経営のためにも最大限効果が期待できる工事をしたいところですが、予算によってはやりたい工事が全てできるとは限りません。
 
安全性の確保を最優先しつつ、物件の資産価値アップと住環境の整備を予算内で実現するには、一体どんな準備をすれば良いのか?
建築の専門知識を持たない経営者ができる最善策は、複数の専門家=業者から工事のアドバイスを受けて、相見積りをとることです。
 
相見積りをとると単純に費用の大小を比較できるだけでなく、個別の工事費用の相場が把握しやすくなります。早期に必要な工事内容と費用がわかれば、予算内で行えるプラスαの工事についても、時間をかけて練ることができるようになるのです。
見積りの比較検討に時間がかけられるよう、工事準備の初手である建物診断はなるべく早めに依頼しましょう。
 
予算内で最大限に希望を叶える工事計画こそが、賃貸オーナーが最も望むもの。そのためには、早めの動き出しと相見積りが不可欠です。
 
著:猫野 千秋