居心地のいい部屋に欠かせないものと言えば、窓。
折々の暮らしの中で、ふと目に入る景色に心和ませる。
そんな眺めの良い窓がひとつあれば、それだけで人生いくらか豊かになる気がします。

お部屋には窓が必要です

窓というものは透明なガラスなどで出来ていて、たいていの場合開閉可能な構造になっています。
建物全体としては、当然その分だけ壁が少なくなるわけです。
窓よりも壁の方が明らかに分厚くて丈夫ですから、建物の強さを考えると窓は少ない方が有利なんですが
しかし窓が無い部屋は法律上「居室」(人が長く過ごすことを想定した部屋)として認められません。
眺望を楽しむだけではなく、もっと大切な機能として「採光」や「通風」、火事の際などの「避難経路」として、窓の果たす役割は大きいのです。

建築基準法では、居室には床面積の1/7以上の面積の採光に有効な窓を備えること、とされています。
たとえば7畳の部屋だと、最低1畳の広さの窓が必要なのですね。
マンションの間取り図などでよく「洋室」とか「和室」ではなくて「納戸」や「フリースペース」と書かれた部屋がありますが、あれは「法律上必要な窓の面積が確保できていない部屋」と考えて良いでしょう。
別にそこを居室として使ってはいけないということではありませんが、もちろん採光はありませんし
たとえばコンセントがなかったり、といった不便はあるかもしれません。

窓から○○が見える

窓から何が見えるか。
これから長く暮らす物件を選ぶときには、これは意外と大きな部分だと思います。
「窓からローマが見える」という映画がありましたが、そんなところが見えたらきっと素敵ですね。
日本の部屋からはなかなか遠くて見えないと思いますが。
ローマでなくても、たとえば海が見える部屋はそれだけで開放的な気分になりますし、遙かな山並みが
眺められる部屋だったら清々しい気分になれそうですし、大都会の夜景を見下ろすリビングで嗜む一杯の
ウイスキーは、仮にそれがコンビニで買ってきたトリスであってもニッカ余市シングルカスク25年に
負けないと感じることでしょう。

話は飛びますが、民間の人も行ける月旅行が少し前に話題になりましたね。有名なIT企業の社長さんが予約したそうですが。
あれ、もしも構造上の問題で「窓の無い宇宙船」だったらいったい誰が乗るでしょうか?
外にカメラがついていて船内のディスプレイで見られます、窓が無くても同じでしょ?と言われたとしても
納得できないですよね。
実際にはそんな「窓が無い宇宙船」なんて事は絶対にないと思いますが。

もう少し身近な乗り物で、新幹線でもやっぱり車窓の景色は大切ですよね。
大阪から東京へ行くとき、富士山が見えるとそれだけで「ああ、Eの座席にして良かった」としみじみ思いますものね。え、思いませんか?
近い将来開通するといわれているリニアモーターカーなどは、ほとんど全部トンネルの中だそうです。
「速いけど楽しくない」という理由であまり利用が伸びないのではないかなあ、なんて他人事ながら
ちょっと心配です。

改めて、窓そのものについて

出典:日経xTECH

脱線しすぎましたのでお部屋の話に戻ります。
山や海以外にも、たとえば有名な花火大会が見えるとかお祭やイベントを楽しむことができるとか、そういうプレミアムな窓のある部屋でしたら、それだけで文句なしに魅力的な物件です。
また、窓そのものの大きさも魅力を左右するポイントです。
たとえば床面から天井まで、高さのある大きな窓のリビングでしたら、明るく開放的で快適な暮らしを
予感させますよね。

以前シャープの液晶テレビのCMで使われていた「壁のない部屋」など、家の三方が全てガラスという
開放的にも程があるような建物でした。
あの家での暮らしはきっと、まるで野外に居るような気分でしょう。
非常に魅力的な建築ですが、人によっては落ち着かないかもしれません。

大きさ以外にも、ガラスそのものの種類や機能も見ておきたい部分です。
通常のガラスの3-5倍の強度を持つ「強化ガラス」、防音や防災、防犯にも効果の大きな「合わせガラス」遮熱や断熱の効果のある「複層ガラス」など、場所と用途に合わせて選びたいものです。
窓といえばもう一つ、天窓の存在も忘れてはなりません。
主に採光のために設けられることが多いのですが、はめ殺しでなく開閉できるものは、換気にも大きな効果があります。

星の綺麗な夜には、そこから星空を眺めるなんていうロマンチックな使い方もいいかもしれません。
当然のことながら、上に上階がある部屋では天窓は作れません。
上の部屋の人が窓を踏み割って落ちてきたりしますからね。
そんな場合には天窓ではなく高窓という選択もあります。
天井に近い壁面に、低く幅の広い窓を設ける方法です。
設置する場所をしっかり考えれば、これも採光の効果が大きいです。

素敵な窓のある暮らし

窓から入るレース越しの光に、気持ち良く目覚める朝。
近頃日本人の睡眠時間がどんどん短くなっているとか、どうも寝付きがよくなくてとか
そんな話を見聞きします。
睡眠負債なんていう言葉もいわれますが、今も昔も、人にとって睡眠が大切なのはいうまでもありません。
夜なかなか眠れないのは、往々にして体内時計の狂い、昼と夜のリズムが乱れているからといわれます。
それをきっちりリセットするためには、毎朝しっかり朝日を浴びることが大切なのだそうです。
太陽の光は大切な自然の恵み。
しっかり採り入れて健やかに過ごしたいものです。

また、日の光がさんさんと注ぐ窓辺は、猫の特等席でもあります。
気持ちよさそうに寝そべる猫たちと一緒にくつろげる、
そんな部屋にはきっと優しい時間が流れていることでしょう。

著:おじま あきら