暖房について考える

日がどんどん短くなってます。いよいよ季節は冬、暖房が欠かせなくなりますね。
近頃はオール電化、暖房も全て電気という家庭も多いと思います。
一昔、いや二昔くらい前には、電気の暖房というと電熱ヒーターや電熱セラミックファンヒーターなど比較的小規模な、簡単なものが多かったように思います。わりと小型で持ち運びが出来て、たとえば足元とかに置いてスポット的に手軽に使えるもの、というイメージでした。あまり部屋全体を温めるようなものではなくて、石油ストーブの補助として使われていた、そんな印象です。

電気か石油か、どちらが効率的?

部屋全体を電気で温めるとしたら、エアコンかオイルヒーターといったものになりますね。
エアコンというと近頃ぐっと消費電力が少なくなって、夏場の冷房などはむしろつけっぱなしの方が電気代が安いなんて言われるようになりました。
暖房もたとえば昼間30分ほどの外出だったらつけっぱなしのほうが安いというデータもあります。(https://www.daikin.co.jp/kuuki/results/05/index2.html 参考) 
一方、オイルヒーターは静かで安全で優しく暖かい、というイメージがありますが、暖まるまで二時間がかかり、気密が低い部屋や広い部屋では厳しいです。電気の消費もフル稼働時にはかなり大きいです。
エアコンに限って言うと、実は石油を燃やすよりもコストが安くなっています。
熱量当たりの費用が灯油よりも安い、ということです。その場でものが燃焼しないので、部屋の中の酸素を消費しないし、二酸化炭素も発生しません。不完全燃焼で危険な一酸化炭素が出る、なんていう心配もありません。
燃焼について余談ですが、ものが燃えるというのは酸素と結合すること、つまり酸化することなんですね。
たとえば鉄は酸素と結合して、赤く錆びます。あれはごくゆっくりと燃焼してると言い換えることが出来ます。
鉄を粉にして表面積、つまり酸素と触れ合う部分を増やすとより錆びやすくなります。
鉄粉と塩水、木炭を混ぜて適当に酸素を通す袋に入れれば、それはそのまま使い捨てカイロになります。
使い捨てカイロは20時間とか24時間とかかけてゆっくり燃焼している、あるいは猛烈な勢いで錆びている、とも言えますね。

効率の面から考えると電気の方が有利だということはだいたいわかりました。
しかしたとえば北海道とか「ものすごく寒い地域」では、やっぱり灯油や炭を使うストーブを使うことが多いといいます。
これは以前のエアコンは外気温が低くなりすぎると室外機が凍結したとか、パワー不足だったとか、家の造りがエアコンで温めるのに向いていなかったとか、そういう事情もあったかもしれません。
しかしいまのエアコンは良くなってます。
外気温がマイナス25度でも使えますし、家も高断熱で気密も良くなっているので、その辺りの問題はあまりないでしょう。
それでも石油の人気が根強いのは、思うにこれは「やっぱり火が燃えてると心強い」からではないでしょうか。

先日の地震で北海道は全体が停電しました。報道の中でしきりに言われたのは「冬場でなくてよかった」という言葉です。
そう、北海道では冬場に暖房が止まると命に関わるのです。
暖房を電気に切り替えている世帯では、停電が命取りになります。
灯油の備蓄さえしっかりとしていれば確実に機能する石油ストーブは、実に心強い暖房です。
それになにより「目に見える形でものが燃えている」というのは、効率とかそういう理屈を超えた力を感じさせてくれるのでしょう。
遠い昔に火を使うようになって以来、我々人間の心の奥深くに刻まれた、記憶に根差した安心感なのかもしれません。
また、焚き火などの火を見ていると心が落ち着く、ということも言われます。

北海道や信州などの寒冷地の庭先で見られる灯油タンク

出典:街を読む/北海道郷土史路上観察

魅惑の薪ストーブ

そして、ものを燃やす暖房の王様というと「薪ストーブ」でしょう。
日本よりも高い緯度にある北欧では、暖炉やサウナ、薪ストーブといった暖房設備が古くから発達していました。
日本でもお洒落な別荘などで見かける作り付けの薪ストーブは、ヨーロッパからの輸入が多いようです。METOSという会社が広く扱っていて、よくそのロゴを見かけます。
 
贅沢な暖かさと心の癒やしを得られる薪ストーブですが、燃えるのは当然「薪」なので、燃え尽きないうちについでやらなくてはなりません。
火の番が必要なのです。さらにその燃やす「薪」の調達やら保管を考えると、ものすごく手間がかかります。実用的な暖房器具というよりは趣味、ライフスタイル、生き方とも言えるかもしれません。
そう、まるで高級なオーディオ装置のように。
こたつや電気毛布、ホットカーペットなど、パーソナルな暖房を指してよく「人をダメにするアイテム」などと言われます。
あまりの快適さに身も心もとろけたようになり、その器具のテリトリーから離れられなくなってしまうからですが、薪ストーブはさらに「人に世話をさせる」「人を召使いにする」という、そういう意味でも暖房の王様ですね。
ただし、薪ストーブには煙突が必要です。また、火をつけて炎が安定するまでの間は煙や臭いもでますので、街中や特に集合住宅では思いっきりハードルが高そうですね。
 
最近では「火が燃えてるように見える電気ストーブ」なんていうものもいろいろ売られています。
 
火が燃えてるような電気ストーブ
https://pmall.gpoint.co.jp/g-ranking/ranking.php?themeid=566
 
とても面白い製品ですが、しかしやはり「本物の火」にはかないません。手軽に設置できるものではなく値段も張りますが、ガスを利用したモダンなストーブもあります。ガラスの中に揺らめく炎を見ていると、リラックスした素晴らしい夜が過ごせそうです。
ただし、部屋自体のグレードやセンスも求められそうですが…。使いこなせればきっと、最高にお洒落な空間を演出してくれることでしょう。

著:おじま あきら
 
ピラミッド型ガス暖炉
http://news.livedoor.com/article/detail/12184902/

バイオエタノール暖炉
http://www.ecosmart-fire.jp/



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