AIが賃貸住宅へもたらすもの

10年後、人工知能・AIにより消滅する仕事という記事をよくネットなどで目にします。たとえばランクインしている“商店レジ打ち係りや切符販売員”(引用:ダイヤモンドオンライン)という仕事、今年1月から米Amazonがリアル店舗で実験を開始する“Amazon Go”というレジ不要自動精算システムが定着してしまえば、10年どころか、瞬く間に世界中から姿を消すかもしれません。また実際すでにAIの普及は進んでおり、アメリカのフォーラムエンジニアリングという、エンジニアの人材マッチング会社では、IBMの人口知能を利用し、成果は上がっています。(引用:IDEASITY) 避けることができないAI化のグローバルな流れ、住宅賃貸市場にどういう影響を及ぼすのか考えてみました。

鮮度重視でロジカルな選別

初めに考えられるのはウエブサイトでのしばりが強まる情報一元化です。
ロケーションや年数、設備など、現在示される判断データーがより細密に、各部屋ごとのデーターがリアルタイムで更新されるでしょう。また入居状況に応じ、賃料の上げ下げも家主さんがスマホから操作できることも簡単です。建物が全て数値に置き換えられる作業が行われ、家主さんはよりアルゴリズムに選別してもらえるようなコンディションを維持するため、日々血眼で更新せざるを得ない状況が見えてきます。

感情を支配できるのは情緒

大手ハウスメーカーの提案する住宅はほぼすべて“省エネルギー”で”メンテナンスフリー“。これはリノベーションでも同じ発想です。コストやメンテナンスフリーの住宅はたしかに生活を楽にさせますが、同時に建物に対する知識や意識もフリーにする恐れがあります。勝手にきれいになってすぐに乾燥してくれるユニットバスは手間いらずで省エネ、快適ですが、多くの人が檜風呂や露天風呂に憧れ温泉に向かう気持ちとは別の次元です。AIがどんなに進化を遂げても、“檜の香りが心を癒してくれる”という人の絶対的な感情を数値化することは不可能でしょう。これからの賃貸住宅はそういった感情にうったえる力を大切にしてゆくべきです。古さが醸す味わい、手入れの良さがにじむ安心感、足を踏み入れたくなる坪庭など、感情を揺さぶる“情緒ある住宅”がひとつのワードとなってくるはずです。

効率よりも美しさが求められる

昨年末放映の[TEDスーパープレゼンテーション]で興味深いスピーチに見入ってしまいました。ティム・レーバーレヒトは「AIで人口知能や機械学習に直面している我々には、徹底した人間中心主義が必要である。機械が効率の良い作業で人間の仕事を奪うなか、人間には効率の良さよりも美しさが求められる。」と説き、満場から大きな拍手を集めます。心の奥深くで気付いていることを他人の言葉で耳にすることで、現実に直面する勇気がわくことがあります。右肩上がりの空室率がささやかれ、それでもなお新築が供給され続けるという先行きの見通しにくい市場のなか、すこし足元を見つめ直し、効率よりも美しさという目を住宅にも向けることがAI化にむけた住宅のひとつの対峙方法です。毎日住まう、人に住んでもらうからこそ、美しい住宅で感情に語りかけることに気付いてほしいと考えています。