物件探しも近頃はネットで、という人が多くなりました。
もちろん実際に決めるのは直接現地で確認して、十分に納得してから。
でも最初の入り口としてホームページを検索してみよう、ということです。
なので、ネットに載せる情報がいま、大切なのです。
その物件を検討したくなるような魅力的な文章、たとえば「陽光溢れる山の手、一千万ドルの夜景をあなたに」とか、「○○駅直結、アーバンライフを愉しむ至高のタワーレジデンス」とか、さらには「窓から見える日本のエッフェル塔、新世界に暮らす贅沢」なんていうような「ちょっとそれはどうかな」っていうような、いわゆる「マンションポエム」みたいなものも大切です。
しかし、人の心によりダイレクトに訴えかけるのは、やっぱりビジュアルです。
そう、一般的には「写真」ですね。
これまで物件の広告というと間取り図が主役で、写真は不動産屋さんが片手間に撮りました、というものが多かったように思います。
しかし最近ネットを見ると、外観も内観もきれいな写真が多くなってきました。
物件の外観に関しては、交通の便や周辺環境、たとえばきれいな川の側だとか緑溢れる公園の前だとか、そういう立地条件の良さを伝えるもの。
また夕方の一番きれいに建物が見える時間帯、いわゆる「マジックタイム」に撮られた奇跡の一枚みたいなものがよく使われます。
外観の写真は見た目のインパクトが強く、アイキャッチとして人を惹き付ける力があるのですが、反面その物件の立地によってはなかなか難しい面もあります。
たとえば高い建物の谷間のような場所に建っているとか、周辺が見た目に非常に雑然としているとか、そういうマイナスの要素が多い物件の場合にはいい感じに撮るのが非常に難しく、はっきり撮るとかえって逆効果になってしまうこともあるからです。
対して部屋の中、内観に関しては、外観ほどのインパクトはありませんが、撮り方によってかなり良く見せられる部分でもあります。
部屋の内観を撮るためにまず大切なのは、機材です。
これはもう言ってしまうと身も蓋もないのですが、プロはそれに特化した機材を使います。
具体的に言うと、超広角レンズです。
ちょっと専門的な話になりますが、一眼レフタイプのデジタルカメラには、フィルムに当たる部分のサイズ(センサーといいます)が大きいものと小さいものがあります。
大きいものがついているカメラの方が値段が高いのですが、より広角に強い、つまり広い範囲を写すことができる、という特徴があります。
このセンサーの大きい、フルサイズの一眼レフカメラに、焦点距離12mmという超広角レンズをつけて写真を撮ると、実際よりも広々と部屋が写るのです。
ただし超広角レンズは厳密に水平と垂直を合わせて撮らないと、画面が歪んでものすごく不自然な感じになります。見ていて平衡感覚がおかしくなるような、不快な写真です。
機材としてもかなり特殊なものですし、そこそこ値段も張ります。
そしてこういう扱いにくさもありますので、プロとして仕事にするというのでもなければ. . .
これは敷居が高いですね。
まあ、だからこそプロはお金をいただくことができるわけです。
敷居が低ければ有り難みがなくて、仕事にはなりませんからね。
なんて、あまり役に立たないお話をしてしまいました。ごめんなさい。
ここからはそこまで専門的ではなく、ごく普通に部屋を撮る場合のちょっとしたノウハウをお伝えしたいと思います。
まず、コンパクトデジタルやミラーレス一眼でもいいので、できるだけ広い角度で写る、広角レンズのカメラを使ってください。
たとえばスマートフォンでも、クリップで取りつけるワイドレンズなどが出ていますので、それを使ってもいいと思います。
次に撮り方ですが、できるだけ水平を意識して、傾かないように撮ります。
垂直方向も、見上げたり見下ろしたりせずに真っ直ぐになるように注意してください。
また、立ったまま撮るのではなく、しゃがんだり座ったり、少し低めの位置から撮ってください。
こうすると天井に対して床面が広く写りますので、部屋が広く見えます。
リビングなど特に見せたいところは、部屋の四隅から一番いい感じに見えるアングルを探します。
だいたい左右の壁が9対1になる辺りがしっくりくることが多いです。
良いアングル
悪いアングル
良いアングル
悪いアングル
露出補正ができるカメラ、明るめとか暗めとかの設定ができるカメラの場合は、少しプラス(明るめ)にして撮りましょう。
部屋の壁はたいてい白いですから、そのまま撮るとカメラが「世の中はこんなに白くないはずだ」と勝手に判断して自動的に暗めに撮ってしまうのです。
スマートフォンの場合、たとえばiPhoneだと、画面を見ながら暗いところを指でタップすると、全体を明るく補正してくれます。こういう機能を覚えてしっかり活用するといいでしょう。
あと、最近ネットでは360度くるくる回して見られる写真が載せられてることがありますよね。
あれも部屋の隅々を見ることができるので効果的です。
あの写真を撮るにはリコーのシータ(THETA)というカメラが必要なのですが、これは量販店に行くと大体二万円くらいから手に入ります。
シータを使う場合には自分自身が写らないように一本足のスタンドを使うのですが、これも二千円くらいからあります。
物件撮影以外にも、パーティーや旅行などでシータは楽しく使えますから、ひとつ買ってみてもいいかも知れません。
いまこれを書いている筆者は、実は物件の撮影をするカメラマンでもあります。
いちおう、プロです。
なので本当は撮影はどんどん依頼してほしいのですが、でもオーナー様が自ら撮った写真には技術以外の思い入れ、情があるかもしれません。
ちょっとしたコツを覚えて、少しでも良い写真を撮ってくださいね。
著:おじま あきら