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「住みたい部屋」の条件はブラッシュアップされる

部屋探しでまず行うべきは、「こんな部屋で暮らしたい」という条件をはっきりさせること。
とはいえ初めての部屋探しでは、意外と自分の抱くニーズを把握しきれていないものです。
2回目以降の部屋探しから住みたい部屋の条件がブラッシュアップされ、「譲れない部分」と「気にならない部分」がひっくり返ったり、思わぬ部分でこだわりが強くなったりという経験をした人は、筆者以外にも多いのではないでしょうか。
 
「良い物件」は一般的な好条件だけでは語れません。十人十色の部屋探しの一例として、筆者の部屋探しのこだわりをご紹介させていただきます。

「譲れない」から「こだわらない」へ

・駅徒歩10分以内
駅近物件の相場が予算オーバー、でも駅徒歩10分圏内は譲れない……となると、家賃の上限を上げるか条件を妥協して探し直すしかありません。筆者は家賃も部屋の条件も譲れなかったので、10分圏内を諦めて徒歩15分圏内に広げて探すことにしました。
そして見付けたのが物件広告上で駅徒歩13分の部屋(実際に駅まで歩くと15分以上掛かったのですが……)。住んでみるとそれほど不便を覚えませんでした。さらに駅前の喧騒から離れたことで、静かな中でのんびり過ごせるカフェやレストランを近所にいくつか見付けることもできました。
 
・2階以上の部屋
初めての部屋探しの際、友人や家族から「防犯を考えて2階以上の部屋に住んだ方が良い」とアドバイスを受けたため、ずっと譲ってはいけない条件と考えていました。
しかし現在筆者が住んでいる部屋はマンションの1階。どうしても猫が飼いたくて飼える物件を探したのですが、諸条件に不満がなかった現在のマンションで空いていた部屋は、1階だけだったのです。
不安を抱きつつ内見に行ってみると、空室のバルコニーはマンション敷地内の一番奥の方。侵入される心配はほぼ無さそうだと判断して、契約することにしました。
また猫を飼い始めて初めて知ったことですが、走り回ったり飛び降りたり、猫のたてる物音は以外にうるさいもの。結果的には階下に迷惑を掛けずに済む1階の部屋を選んだことは正解でした。

敬遠する人が多い条件も許容範囲になることがある

・駅までバスアクセスでも問題なし
前述の駅徒歩15分以上の物件に住んでいて少し大変だったのが、駅前で買い物をしたとき。当時は仕事からの帰宅時間が遅く休みに買いだめする生活だったので、15分以上の距離を山ほど買い込んだ食料品や日用品を持って歩かなければならなかったのです。
「大荷物を持って10分以上歩くならバスに乗った方が楽なのではないか?」と考えるようになり、その後の部屋探しではバスアクセスの物件にも条件を広げるようになりました。
 
・大きな道路や線路が近くても生活できる
車通りの多い道路や線路近くの物件は、騒音があるため敬遠する人が多いでしょう。
筆者は初めての一人暮らしで、あまり深く考えずに大きな道路近くのマンションの2階に入居してしまいました。しかし住み始めるとすぐに絶えず車が走っている音に慣れてしまい、特に生活に支障は出ず。その後も駅徒歩2分のマンション、線路沿いのマンションに入居しましたが、騒音がストレスになることはありませんでした。
ただもちろんなんの対策もなく住めるわけではありません。部屋探しの選択肢に入れるには、防音素材の壁やペアガラスの窓など、ある程度の騒音対策がされていることが必須です。

だんだんはっきりしてくる、自分でも意外なこだわり

・選べる物件はマンションのみ
部屋探しで間取図を見るときは、バルコニーの広さをかなり重視します。これは筆者にとって譲れない条件の1位2位を争うこだわりポイント。
洗濯物や布団をゆったり干せるだけでなく、流星群や月食、日食といった天体イベントを楽しみ、なんでもないときにはお月見や星空鑑賞をしてくつろぐために、バルコニーに椅子を置ける広さが必要なのです。
広くてしっかりした作りのバルコニーはアパートでは見付からないので、どうしてもマンションの部屋から選ぶことになります。
 
・3点ユニット&2点ユニットNG
バス・トイレ別は、筆者が初めて部屋探しをしたときからの絶対条件。独立洗面台までを望むと条件を満たす物件が少なくなってしまうため、以前は「2点ユニットならOK」という方針で探していました。洗面台の鏡が汚れやすく見づらい、鏡の前でドライヤーを使えない、歯ブラシや洗顔グッズなどの置き場所に困る、といった不便はあっても、我慢して選択肢を増やした方が良いと考えたのです。
ところがあるとき、良いなと思う物件でも2点ユニットだとつい内見の候補から外していて、結局は独立洗面台の物件が見つかるまで粘っている自分に気付きました。
「些細な不便だから妥協できる」と思おうとしましたが、本音では独立洗面台が譲れない条件となっていたわけです。住まいへのこだわりをごまかして自分を騙すのは、とても難しいのだということでしょう。
 
・少しだけ個性的な部分を求める
何度か引っ越すうちに、「条件的に不満のない無難な物件より、条件を一部妥協してでも特徴や個性のある部屋を好むようになった」という人は、筆者以外にもいるのではないでしょうか。
大きな特徴、強い個性でなくて良いのです。
例えば「出窓がある」「一面だけ壁の色や素材が違う」「床がヘリンボーン」「作り付けのおしゃれな棚がある」「外観のカラーリングが格好良い」など。一部にちょっとした特徴や個性があるだけで、「ここを自分の住まいだと言いたい」という気持ちが強まり、契約に背中を押されることがあります。

こだわりと寛容さが絡み合う、「住みたい部屋」の意外な条件

一般的に「良い物件」とされるのは、希望の間取りに好条件が揃った上、手頃な家賃で借りられる部屋のことと言えるでしょう。筆者が初めて一人暮らしのために部屋探しをしたときも、理想としたのはそんな部屋でした。
 
しかし一般的な住みやすさと個人の理想的な住まいの姿は、ときに一致しないものです。
部屋探しの条件は意外と頑固だったり大胆に妥協できたり、こだわるポイントもこだわりの強さも十人十色。
好条件揃いの部屋でも全ての人にヒットするということはなく、同時に誰にとってもNGという部屋も存在しない、何度かの部屋探しを繰り返す中で、筆者はそんな考えに辿り着きました。

著:猫野 千秋