不動産投資を考え始めたら

不動産収入。なんと心地よい言葉でしょう。私が働かなくても不動産がお金を稼いでくれる。
まるで泉のようにこんこんと湧いてくる収入。
「お金の成る木」「打出の小槌」なんていう、まるでドラえもんの未来の道具のような魅惑的なアイテムじゃないですか。
例えば三浦雄一郎さんとか特別な人を除いて、普通の人間はどんどん歳を取ると、どんどん動けなくなります。この先働けなくなったらどうやって生きていこうか。誰しも不安になりますよね。
でもこの「不動産収入」というものがあれば心配ご無用。ですよね?
不動産収入を得るためには当然、不動産が必要です。
誰かがくれたりするものではないですから(降って湧いたように遺産で転がり込む、というケースも無くは無いですけど)、まずはこれを購入する、つまり不動産投資をすることになりますね。
投資というと、株とかFXとか先物取引とかいろいろありますが、基本的にはお金を出したり入れたり移動したり、ですよね。
しかし不動産収入を得ようと思うと、投資だけではなくてその後に経営もしないといけません。
お金を出した後、さらに管理や運営をして、つまりその物件に入居していただいて、その方々から家賃をいただいて、初めて収入になるのです。
つまりお金を出すだけではなく、経営者になる覚悟が必要です。
実際には建物の管理や入居者とのやり取りは管理会社に委託する、という人も多いでしょう。
あるいは建物をそのまま一括して不動産会社に託して、その会社から全体の賃料の八割とか九割を安定して払ってもらう「サブリース」というやり方もあります。
これだと経営とか運営の手間はありませんから、とても手軽でイイ感じですよね。

渡る世間は危険がいっぱい

でも、最近聞いたことありませんか? 
「か〇ちゃの〇車」とか「ス〇ガ銀行」とか、そういう言葉が新聞を賑わせていますよね。
最初はスマート〇イズという会社が、不動産投資をしたい人を集めて「若い女性向けのシェアハウスを建てませんか?その物件はうちが一括借り上げして、向こう30年間はこれこれこれだけの賃料をあなたにお支払いしますよ。不動産ローン返済を差し引いて、毎月これだけ確実に儲かりますよ」と、そういう話をもちかけたようです。サブリース契約ということですね。
それで実際に建物を建てて、賃料をもらい始めて、しばらくするとスマート〇イズは「経営が苦しくなったので賃料払えません。契約は解除しますから、後は勝手にシェアハウスの入居者を探して経営してください。じゃ!」って逃げてしまったんですね。
このスマート〇イズっていう会社、多分最初からこれを計画してたんだろうって言われています。
もともと上手くいくようなプランではなくて、逃げること前提のビジネスモデルだったと。
じゃ、何でこんなことをしたのか。それは元々建てて売った物件、その値段を水増しして、倍ほど高く売ってたのだろうと言われています。ひどい話ですね。
だから投資した人たちは今、ものすごい額の住宅ローンと、実際には半分くらいの値打ちしかない物件を抱えて途方に暮れているのです。
また、こういうずさんな計画に、どんどん投資ローンを貸し付けた銀行がス〇ガ銀行だった、ということです。

事前の研究と勉強はしっかりと

これは本当に極端な例でしたが、しかし投資した人にも責任は有ります。
それは、その計画が本当にうまくいくのか、そんな美味しい話が本当に成り立つのか、そこを見極める力がなかったことです。不動産を経営するためには、やっぱりそれなりの勉強や努力が必要です。
もちろん、リスクもあるということを覚悟したうえで、です。
か〇ちゃの〇車は「いきなり新築を一棟建てて貸す」というものでしたが、実際にはそれよりも、例えば大きなマンションの一室を買って貸すとか、中古のアパートを買って入居者を募るとか、そういうことの方が一般的でしょう。
物件を購入するに当たっては、築年数、広さ、駅からの距離、もちろん値段、そういういろいろな条件を見比べて検討しますよね。
また、例えばアパートやマンションだったら、現在どれくらいの人が入居していて、その人達は何年くらいそこに住んでいて、毎月家賃はこれだけで、というようなことが書かれた「レントロール」という書類をもらって検討することになります。
ところがこのレントロールも注意しなければなりません。
相手はその物件を少しでも高く売りたいので、良いところはしっかり書きたいし、不利なところは隠したいですよね。
悪質な例では、退去する予定の人がいるのにそれを書かなかったり、ひどいところでは誰かの名前を借りて、名義だけその部屋に入居してもらって空室が無いように装う、いわゆる「サクラ」が混ざっている、なんていうこともあるようです。
もちろんこの物件を購入すれば、その部屋は全部空室になってしまいます。
言うまでも無く不動産経営の収入は賃料ですから、一番こわいのは空室です。
賃料は入ってこない、投資ローンは払わないといけない、なんてなったらどつぼです。
こんな物件を買ってしまったら、いきなり空室を抱えてひどいことになりますよね。

リスクをきっちり把握して、いい経営者に

不動産投資というのはリスクがあります。
たとえばこれら全て万全に勉強して、しっかりと経営にも気をつけていても、もしも事故物件が出ればその部屋はしばらく人が入らないかもしれません。
いま日本は単身世帯、特に独居の老人が増えています。この先はどんどん孤独死も多くなるでしょう。
また、極端な例ですが「座間事件」みたいなのが起これば、それはもう一棟まるごと一気に吹っ飛んでしまいます。
そういうどうしようもないリスクは対策に限りがありますが、少なくとも注意できる部分は細心の注意を払って、防げるリスクは確実に防ぐことが大切です。
住まいは生活の要です。オーナーにとっての収益物件は、入居されている方から見れば生活の基盤であって、人生の舞台です。
投資だけでは無く「経営者になる」という心づもりを持って、借りる人の気持ちに寄り添い、いい関係を末永く続けたいものです。

著:おじま あきら