インバウンド数の激増が空室問題解消の希望に

出典:https://pixabay.com/ja/空港-ターミナル-飛行-航空-交通機関-アーキテクチャ-国際-1515448/

少子高齢化の進む日本社会、賃貸物件のメインターゲットである年齢層が減っているせいで供給過多となっており、空室対策もどんどん難しくなってきています。実感しているオーナーさんも多いのではないでしょうか?
 
そこで新たな賃貸物件のターゲット層として注目を集めているのが、日本へ観光や労働などの目的で訪れる外国人です。
ここ数年、日本を訪れる外国人の数は右肩上がりに激増し続けています。外国人の海外旅行先として日本が高い人気を誇っていることに加え、国内の労働力不足解消のため、政府が外国人労働者の受け入れを進めていることが主な理由です。
 
日本に住んで働くためには住居が必要になりますので、外国人の賃貸物件の需要が高まるのは必然と言えるでしょう。また、観光目的の訪日客で短期間暮らせる拠点を求めている人、日本人と交流できる暮らしをしたい留学生などには民泊やゲストハウスの需要があり、賃貸物件も短期契約を可能とすることで、こうした層をもターゲットに空室を解消できる見込みがあります。
 
とはいえ、文化の違いから外国人の入居にトラブルの心配が付きまとうのも事実。外国人の入居を受け入れるなら、トラブル回避のため対策を立てる必要があります。

まずは外国人入居者にありがちなトラブル

●近所とのトラブルとなるルール違反

・ゴミの分別や出す時間などのルールを守らない
日本ならでは分別の細かさやゴミ出し時間のルールに対応できないのが原因。ゴミは悪臭もあるためトラブルになりやすい問題です。
・パーティーなどで騒音を出す
大勢の人の出入りや話し声、大音量の音楽は、隣近所にとって大変な騒音になりますが、パーティーに慣れている外国人と慣れていない日本人とでは、騒音と感じるレベルにズレがあるようです。

●部屋の使い方や契約のトラブル

・許可を得ずに内装に手を入れてしまう
海外では自力リフォームOKの物件が一般的にあるため、釘を打ったりペイントしたりといったNG行為を悪気なく行ってしまう人もいます。
・契約していない人と一緒に住む、又貸ししてしまう
家賃を払っているんだから何人で住むのも勝手、と考えて複数人で同居したり、部屋を借りられない外国人に又貸しして賃料を取ったりするケースがあります。外国人の賃貸への入居が難しいことが一因で起きる問題と言えそうです。
・家賃の支払いや契約をほったらかしにしていきなり帰国してしまう
突然帰国したきり連絡が取れず、家賃の回収や契約解除後の後始末などで大家さんが困り果てる、という事例が、外国人と賃貸の話題ではよく取り沙汰されます。外国人の入居で最も警戒されるトラブルと言って良いでしょう。

外国人入居でありがちなトラブルを避けるには

●ルール違反、マナー違反が原因のトラブルを防ぐ

・共通認識に頼らず、「当たり前」のことも説明して理解してもらう
日本人が常識だと思っているルールもマナーも、文化の違う国から来ている人々にとっては常識ではありません。
外国人入居者側にとっては、当然ながら自分の知る常識に沿った生活が暮らしやすいもの。説明されなければ悪気なく母国でのやり方を貫いてしまうでしょう。
賃貸物件でのルールと近所に迷惑をかけないための生活のマナーを、共通認識があると思い込まず、しっかり詳細に説明することがトラブルから物件と入居者を守ることになります。
・日本語がわからなくてもルールを理解できるツールを用意する
できれば英語やその他の言語が話せる人が管理人として居れば良いのですが、そうした人材の確保はなかなか難しいところ。
物件のHPやSNSアカウントを作成して多言語対応にするなど、日本語がわからなくてもルールやマナーを把握できる工夫をしましょう。
ゴミ捨て場や駐輪場などの共用部分にピクトサインを用いたり、デジタルサイネージで映像を使って説明したり、ビジュアルを使った説明や案内も良い方法です。エントランスに設置すれば、入居者全員への周知も簡単になります。

デジタルサイネージを設置したエントランスホール

デジタルサイネージ

●契約上のトラブルを避けるには

・契約違反の重大性を伝える
これもやはり、まずは契約内容の説明を徹底することが大切です。
日本で賃貸物件を借りると、通常は原状回復義務があること、勝手に入居者を増やしたり又貸ししたりは重大な契約違反であり、契約解除される可能性もあるということを始めに教えましょう。
・外国人向け賃貸保証会社を利用する
外国人の入居希望者に保証会社の利用を求めれば、オーナー側としても家賃未納のまま帰国されるような事態に備えられ、受け入れの障害となる大きなハードルが一つ 無くなります。
また、外国人向けの保証会社のほとんどは、家賃の保証だけでなく入居者と物件オーナーの間に入って言葉の壁がある外国人とのコミュニケーションを助けたり、入居後に起きるトラブルにも対応する幅広いサービスを提供しています。外国人の入居を積極的に受け入れたいオーナーの心強い味方になってくれるでしょう。

実はメリット盛りだくさんの外国人向け賃貸

外国人入居者を受け入れられれば、所有物件をアピールできるターゲットの幅が大きく広がります。現状では外国人の入居を積極的に受け入れる賃貸物件はまだまだ少ないので、受け入れ始めれば空室が埋まるのも早いはず。
借りやすい物件が少ないだけに一度入居したら長く住み続けてくれますし、退去する際には外国人同士のネットワークで次の入居者を紹介してもらえることも期待できます。
他にも日本人に避けられがちな和室やユニットバスが好まれるなど、メリットは盛りだくさん。トラブル回避の対策さえ万全にできれば、外国人向け賃貸へのシフトは大いにおすすめなのです。
 
著:猫野 千秋