大家さんになる

手持ちのお金を増やしたい。当たり前に誰もが考えることです。
ずいぶん昔、銀行の金利が5%とかそういう時代がありました。
その頃はとにかく預けていれば、お金は勝手に増えました。しかしいまは超低金利の時代です。
銀行に預けていてもほとんど増えません。
多少のリスクを覚悟して投資をするなど、運用を考える必要があります。
株、FX、先物取引。
最近ではバイナリーオプションなんていうほぼギャンブルに近いものなど、いろんな投資があります。
お金をあちらからこちらへ移動する運用、そういうイメージが強いのではないでしょうか。

不動産投資もまた、かつては「とにかく土地を買って持ってればすぐに値上がりするから、売れば儲かる」というようなことがあったでしょう。
しかしいまは「購入した物件を賃貸して、家賃収入を得る」という意味での「不動産投資」が一般的でしょう。これは投資であると同時に事業です。
お金を動かすだけではなく、相手のある仕事です。物件に人が入居した時点からあなたは「大家さん」。
そこから「不動産管理」という、終わりのない業務が始まります。

大家さんのお仕事は大変です

投資して手に入れた物件に関して、まず最初の仕事は入居者の募集をすること。
広告を打って、入居希望者が来れば説明や現地案内をして、契約を交わして、毎月の家賃を徴収して、
日々の修繕や補修の対応をして、時にはご近所トラブルにも巻き込まれ、契約更改の手続をして。
独居老人が増えた昨今では孤独死やその後の事故物件対策、なんていう大変に煩雑な業務です。
実際には、広告や入居の契約、建物の管理や入居者とのやり取りは町の不動産屋さんや管理会社に委託する
という人も多いでしょう。
しかし委託すると、たとえば入居に関してはひと月分の仲介手数料、さらに広告費などのお金がかかります。日々の管理にも、家賃の数%を管理会社に払わなければなりません。
サラリーマンなど別に本業を持っていて、不動産管理に時間を割けない人。
言い方は良くないかも知れませんが、完全な不労所得として不動産投資をされてる人は、全てを管理会社に
委託というやり方が当たり前かもしれません。
しかし、いわゆる大家さんを本業にされている方や、ローンとの兼ね合いで経費をできるだけ抑えたい方は
自分でこのような管理業務をこなすことになります。

いまはITの時代です

とはいえ一人でできることには限界があります。
特に戸数が多くなってくると、多忙になりすぎてなかなか行き届かない、
なんていうことにもなりかねません。
しかし現代はIT、インフォメーションテクノロジーの時代です。
不動産管理にITが活用できれば、少しは業務の負担が軽くなるかもしれません。
ITというとなんとなく難しい、ややこしい、きっと自分には縁が無い、なんて思われるかもしれません。
でも意外と身近なところにITは忍び寄ってきています(って、ネガティブな言い回しにしなくていいんですが)。
「オッケー、グーグル、音楽かけて」とか「アレクサ、電気消して」とか、テレビのCMでよく見かけませんか?あれって実はわかりやすいITです。
ああいう感じで「オッケーグーグル、家賃もらいに行って来て!」とかできればすごいのですが、残念ながら奴らはそういうフィジカルな作業は苦手です。
音楽をかけたり電気を消したり天気を調べたりはしてくれますけど、お米をといだり洗濯物を取り入れたりはしてくれないです。
もちろんそのうちそういうこともしてくれるロボットができてくるかも知れませんが、現状ではせいぜい踊ってくれるPepper君くらいです。
 

現在、大家さんの仕事に活かせそうなITとは?

では、大家業でITが役立ちそうなのはいったいどういう場面でしょうか。
まず一番最初に使えそうなのは、入居者の募集ですね。
いま「インターネットを全く使っていない」という人は、おそらくあんまり居ないのではないでしょうか。
さらにFacebookやTwitter、LINEなどのSNSも、たいていの人が使っているのではないでしょうか。
これらを積極的に、効果的に利用すれば強力な味方になります。
手軽に情報を発信することができるSNSやブログなどを利用して、広告を打つのです。
「この物件に住んでみたい」という気持ちになるようないい感じの紹介文やキャッチコピーが書ければ、
きっと問い合わせが増えるでしょう。
また、写真が得意な大家さんで、物件をより魅力的に見せる写真が撮れれば、宣伝効果はさらにアップします。
もちろん、このキャッチコピーと写真だけプロにお願いするのもありです。

次に日々の管理について考えてみます。
入居者からの要望や問い合わせ、クレームなどに対して、電話以外にメールで対応できるというのはもはや当たり前のことです。
しかしこれは単なる通信手段ですので、業務の負担が減るようなものではありません。
そこで最近では、ネット上で大家さん向けのサービスを提供する会社が出てきています。
入居後の相談、クレーム、退去時の精算、修繕、そういった諸々をタスクとして管理してくれたり
契約や家賃を管理してくれたりといったサービスから、空き部屋が出た際の募集などにも対応してくれるようです。
検索すればいくつかヒットすると思いますので、内容を見比べて上手に利用するといいでしょう。

そして、大家さんにとって気が重いのはもうひとつ、確定申告でしょう。
国税庁のホームページでは「鑑定申告書等作成コーナー」というものがあって、これを利用すると比較的簡単に申告書が作成できるのですが、それまでの日々の作業がまた大変ですよね。
家賃や経費の帳簿をつけたり、口座を管理したり。
これも最近ではクラウドで代行してくれるサービスが増えています。
クラウド会計サービスなどで検索すればいくつか見つかるでしょう。
 
「大家さん」「店子さん」という言葉から受ける印象もありますが、不動産管理は貸し主と借り主、人と人とのやり取りです。
ITという無味乾燥なイメージとはなかなか馴染まない部分もあるかとは思いますが、もしもそれでお互いに負担が少なくなる、便利になることがあれば、どんどん活用してみてもいいのではないでしょうか。

著:おじま あきら