北欧建築家の巨匠 | アルネ・ヤコブセン の代表建築

椅子や家具に詳しい方であれば、一度は名前を耳にしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
「スワンチェア」を始めとした、有名な家具を数々デザインしてきた、アルネ・ヤコブセン。多くのデザイナーに憧れられ、そして影響を与え続けた北欧建築の巨匠です。今回は、そんな彼が残した「人の心を打つ建築物」を紹介していきながら、アルネ・ヤコブセンについての理解を深めてもらいましょう。代表作と呼ばれる建築物も紹介していきます。

アルネ・ヤコブセンとは?

1902年にデンマークで生まれたヤコブセンは、元々画家志望でしたが父親に反対されてしまいます。父への反発から家出をした彼は、友人であるフレミング・ラッセンから「建築家になってみないいかい?」と誘われたこともあり、デンマーク王立芸術アカデミーへ入り学ぶことを決意。卒業してから目まぐるしい活躍が始まります。

彼の運命を決定づけたと言っても過言ではない『未来の家』は、大きな反響を呼びます。しかし第二次世界大戦が勃発したことで、彼の創作活動にもブレーキがかかります。ヤコブセンはユダヤ人だったためナチスの迫害を恐れて、スウェーデンへ亡命。その期間は作品を生み出すことはなかったと言われています。戦争が終わるとデンマークへ帰国し、1971年に逝去するまで精力的に活動を続け、斬新かつスタイリッシュな作品を生み出し続けました。

オーフス市庁舎

まだ35歳と若かったヤコブセンが盟友であるエリック・ムラーとタッグを組んで設計した建築物です。こだわりの強いヤコブセンは、屋内で使われる家具、照明、ドアノブ、灰皿と全てに心血を注ぎました。「オーフス市庁舎と言えば時計塔」と言われるくらい有名になりましたが、当初は時計塔の設置を考えていなかったという裏話があります。

しかし「市庁舎に時計塔がないというのは、あり得ない!!」と市民の批判を受けたことで、「気が進まないけど、そこまで言われるのならつけようか」と、ヤコブセンは予定を変更。面白いのが時計塔の設置された場所です。なぜかオーフス市庁舎の中腹部辺りに、時計塔がつけられているのです。

これは市民からの批判を快く思わなかったヤコブセンの「ささやかな仕返し」であるのではないか、という憶測が立てられています。全てを受け入れるのではなく、こういった抵抗を見せるのが建築家のこだわりと言えそうです。恐らくヤコブセンは、その様な遊び心を持っていた人だったのでしょう。

市民の主張はこれだけにとどまりませんでした。当初、外壁は白色にする予定だったのですが、「市庁舎に石が貼られていないと、威厳が損なわれて良くない」と言う声が聞こえてきました。そこで急遽、石貼りの壁へと変更になったのです。

モダン建築と聞けば自身の感性のみを信じて、他人の声に耳を傾けないといったイメージを持たれるかもしれません。しかしヤコブセンは市民の声を取り入れながら、デザインを変更していきました。そのまま要求を受け入れるのではなく、どこかアレンジを加えるところがヤコブセンらしいと言えそうです。

ラディソンSASロイヤルホテル

コペンハーゲンの街の真ん中に建てられ、ヤコブセンの名を知らしめることになった代表的建築物です。ドアノブなど、細かいところまでヤコブセンがデザインをしています。今でこそ増えてきたデザインホテル。実はラディソンSASロイヤルホテルこそが、世界で初めて出現したデザインホテルなのです。

21階もあるオシャレなビルはコペンハーゲンに住む人達からすると「自慢の建築物」と言えるでしょう。その場所によっては建物の高さに制限が設けられています。それほど高い建物があるわけではないコペンハーゲンで、21階建てのラディソンSASロイヤルホテルは、かなり存在感を発揮しています。

最上階にあるレストランからの景観は抜群で、こちらのホテルを訪れたのなら、一度は食事をする価値があると言えます。

デンマーク国立銀行

銀行のデザインをも手がけているのが、ヤコブセンのすごいところです。こちらの建築物がヤコブセンにとって、最後の作品となりました。排水とハンドルのみを外部に出して、それ以外の機能的な部分は壁の中に埋め込んでしまうという、非常に思い切った作りになっており、当時の人達を驚かせました。ヤコブセンが亡くなってしまっても、彼が建築物に込めたメッセージは、後世の人に届き続けていきます。

まとめ

アルネ・ヤコブセンが世に送り出した建築物を紹介してきました。建てられる過程で起こった出来事や、ヤコブセンの葛藤などを考えると、よりその価値が分かるはずです。彼が作った建物や家具などは、まだまだたくさんありますので、興味を持った人はぜひご自身で調べてみるという楽しみ方もあります。実際に現地に足を運んで目の当たりにしてみると、圧倒的なスケールに感動を覚えることでしょう。